最後に、コグニティブ・ファウンデーションについて解説します。
コグニティブ・ファウンデーションは、あらゆるICTリソースを全体最適に調和させて、必要な情報をネットワーク内に流通させる機能を担っており、マルチオーケストレータが、クラウドやエッジをはじめ、ネットワーク、端末まで含めて様々なICTリソースを最適に制御することで、ニーズにこたえる迅速なサービス提供をめざすものです。
コグニティブ・ファウンデーションは、ネットワークやサーバ、回線等様々なICTリソース群をマルチオーケストレーション機能を用いて、レイヤの異なる複数のリソースを最適統合していきます。
正直イメージしづらいので、具体的な研究開発の取り組みを紹介します。
具体例をもとに説明すると、2019年の台風15号や19号は大きな災害となり、通信サービスにも大きな影響がありました。NTTが通信基盤を提供していくなかで、これまでも機器が発するログから障害をAI(人工知能)が予測して自律的に対処する技術の研究開発に取り組んできましたが、これを今後もう一歩進めようとしています。
例えば、台風の勢力や進路といった気象情報、イベント開催情報など、ネットワーク機器を監視するだけでは分からない情報など、多様な情報もIOWNのコグニティブ・ファウンデーションに取り入れていきます。新たに収集した多様な情報を基に、システムが自ら考え最適化していくことで、災害発生前に対策立案し実行します。未来予測を用い、システム自体が進化していくことを目指しています。
また、無線リソースに関する最適化技術も新たな研究開発を進めています。今、世の中にはさまざまな無線の方式があります。従来の4G/LTEはもちろん、衛星通信、Wi-Fi、WiMAX、IoT向けのLPWA (Low Power, Wide Area)、そして5G、Local 5Gなど、非常に複雑になってきました。
利用シーンにおいて、その種類や使い方、ネットワークサービスを意識させない無線アクセスを最適化する技術。このような無線制御技術の総称を「Cradio(クレイディオ)」と名付けて研究開発を推進しています。Cradioでは、場所だけでなく混雑や品質の予測に基づいて、プロアクティブに無線接続を最適化します。
例えば、Wi-Fiのスループットが低い東京駅にいる人に、急いで情報を送りたい、といった場合にネットワークの側から最適な無線アクセスを選択し、接続を制御することもできるようになるでしょう。場所、アプリケーション、環境などに応じて、方式や事業者を意識せず、無線アクセスを利用できるような無線制御技術をコグニティブ・ファウンデーションに取り入れていきます。
またドローンや自動運転車両など移動を伴う無線通信品質の変化をAI(人工知能)で事前予測し、最適な無線環境を自動選択・設定することで、多種・多様なサービスの提供をめざしています。